3月28日水曜日 晴れ。初めてのテラス席。やはりまだ少しだけ肌寒い。
おれの好きな落語に「幾代餅」と言う演目がある。話のあらすじは、若い男が幾代と言う花魁に惚れて、、、いやいや、落語のあらすじ書くのって難しいな。。。まあ、とりあえず「幾代餅」と言う演目がある。先日実家に帰省した時に母親から近所のパン屋の話を聞いて、おれはその「幾代餅」を思い出した。
実家の近くにあるパン屋の娘さんが、道路脇に立って、通り過ぎる車に向かって手を振りながら真夏の暑い日も、雪の降る寒い日も毎日パンを売っているとのこと。ここまでだとなんてことの無い話なのだけれど、困ったことに、実に困ったことに、この娘さんと言うのが、年の頃25,6で、とんでもない美人だと言うのだ。それで近所の男連中を虜にしているのだと。更には評判が評判を呼び、隣県の男連中の耳にもその娘さんの噂が入り、わざわざ隣県から田舎のパン屋までその娘さんを求めて男達が車で列をなしているとのこと。
男達はみな口を揃えて言うらしい
「あんなに健気に毎日立っているのを見たら、買ってあげないとかわいそうだ」と。
男達はみなわかっているのだと思う。そんなことを言いながら、取り立てて用の無い田舎町までわざわざ車を出して、その娘さんに会いに来ている自分が一番かわいそうだと言うことを。おれも次に帰省した暁には、必ずそのパン屋に行きたいと思う。ちなみにそこのお店のパンはとてもおいしいらしい。
そうだ。久しぶりに「幾代餅」を聴こう。
十代目金原亭馬生と五代目古今亭志ん生のどちらのを聴こうか。どちらも聴こう。